トマトの尻腐れ症

 

トマトの尻腐れ症はカルシュウム不足による欠乏症とされていますが、カルシウム不足になる原因にはいくつか考えられます。

 

その一つは土の中にカルシウムが欠乏している状態で栽培するとカルシウムを吸収できずに尻腐れ症になる場合です。

 

カルシウムは土壌の酸度を中和するためにも必要な養分なので、カルシウムが不足している土壌では酸性が強くトマトの生育にも影響があります。

 

1番花が尻腐れ症になる場合や休作していた畑でトマトを育てる場合は苦土石灰などで土壌酸度を矯正する必要があります。

 

もう一つはカルシウムが十分に存在している状態でも「土壌水分が少ない」、「湿度が高い」、「風通しが悪い」などの蒸散作用を妨げる環境では吸収されにくくなります。

 

また、カルシウムは三要素(窒素・りん酸・カリウム)に比べると植物に吸収されても移動しにくいので草勢が強くなると欠乏しやすくなります。

 

 

好カルシウム植物で発生しやすい欠乏症

トマトの花

 

好カルシウム植物は他の植物に比べてカルシウムの要求度が高く、不足すると葉の先端部や果実に欠乏症が発生します。

 

果菜類ではスイカやカボチャ、イチゴなどが好カルシウム植物に含まれますが欠乏症は葉の先端部に発生します。

 

トマト、ナス、ピーマンなどのナス科野菜も好カルシウム植物ですが葉の先端部と果実に欠乏症が発生します。

 

特にトマトは尻腐れ症を発生する代表的な野菜で欠乏症を回避するために石灰資材の施用は不可欠です。

 

酸度が低い場合は苦土石灰などの土壌改良資材を施用して土壌中のカルシウムが不足した状態を改善することが大切です。

 

多肥栽培で発生しやすくなる

トマトの花

 

窒素やリン酸、カリウムやマグネシウムが土壌中に多くなるとカルシウムの吸収が阻害されて欠乏症になりやすくなります。

 

窒素は化成肥料だけでなく、未熟な堆肥に含まれるアンモニア態の窒素がカルシウムの吸収を阻害します。

 

リン酸はカルシウムと結合して水溶性のカルシウムイオンを不溶性にしてしまいます。

 

カリウムやマグネシウムはアンモニアと同じく陽イオンなので、カルシウムとは吸収が拮抗する関係になります。

 

カルシウムは移動しにくい要素

苦土石灰

 

根から吸収されたカルシウムは水に溶けた状態で蒸散作用の強い成熟した葉へ移動していきます。

 

しかし、カルシウムはいつまでも水に溶けた水溶性の状態ではなく、他の陽イオンと結合して不溶性になります。

 

不溶性になったカルシウムはその場所から他の場所へ再度転流することはなく植物に利用されます。

 

カルシウム不足の症状が現れるのは先端部の新芽や果実で草勢が強くなる3番花以降に発生しやすくなります。

 

多肥栽培でなくても草勢が一時的に強くなる時期はカルシウム症状が発生する前にカルシウム資材の葉面散布がお勧めです。

 

カルシウムの葉面散布はどうするの

ミニトマト

 

カルシウムの葉面散布は花房が開花し始めるころに散布することで果実の欠乏症を予防する効果があります。

 

尻腐れ症が発生した果実は葉面散布で回復することはないので発生した果実は早期に除去します。

 

葉面散布剤は塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどが含まれていますが希釈倍率や散布時の高温には薬害に注意が必要です。

 

散布は花房の開花時から7〜10日間隔で3回、欠乏症が発生する葉の先端部と花房に行います。

 

葉かぎで欠乏症を防ぐ

とまとの葉

 

トマトの葉は小葉が複数枚集まって一つの葉を形成する複葉で5〜7枚の小葉から複葉で形成されています。

 

尻腐れ症は草勢が強くなる3〜5番花が咲くころから発生しやすい傾向にあり、発生したらその上位の花房が咲く前に葉かぎを行います。

 

摘葉は蒸散作用の強い葉へ集まりやすいカルシウムを開花前の花房へ移動しやすくすることが目的です。

 

1番花

 

摘葉する葉は開花する花房の反対側にある葉でこの葉を摘葉することでカルシウムが果実へ移動しやすくなります。

 

花房は花房の上と下の葉2枚と花房の反対側に伸びている葉の合計3枚で大きくなるので、反対側に伸びている葉の1/2〜1/3を残します。

 

トマトの草勢は1株の葉数に左右されるので、15枚を基本に1度に刈り込みすぎて草勢が落ち込まないように注意しましょう。